【報告】MCシンポジウム管理実践報告 ②部署の目標達成に取り組む(ロードマップ) 発表者によるパネルディスカッション

管理実践報告②部署の目標達成に取り組む(ロードマップ)
発表者によるパネルディスカッション

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平林:このパネルディスカッションでは、私が司会を務めさせていただきます。
私のコメントになってしまいますが、今日3施設の皆さんの発表を聞いていて、何よりも感動したのは、どの施設でも、何をやったのかということが、チャートにしっかり書かれているのです。それにより、取り組みを終えたあとでこのように振り返りを行うということも可能になりましたし、他部署や他の施設も真似ることができると思います。参加者の方でも、「あ、それをうちでもやってみよう」と思った方が多いのではないかと思うのです。そう思えるようなプロセスがしっかり書かれていることが、まず何より素晴らしいことだと思いました。

近畿大学病院 ━━ ロードマップで取り組みを整理し直して感じたこと

平林:近畿大学病院の五島さんは、実際に計画を立ててやったことを、あとからこのMCチャートとかのロードマップのかたちにもう一回落とし込み直した、という経緯だったかと思うのですが、整理し直してみてどう感じたかというところを、もう一回お話しいただいてもいいですか?

近畿大学病院 五島:はい。おっしゃる通り、当初はMCチャートをあまり活用しきれていなかったと思います。私たちはまず、「目の前の急変に適切に対応できるようにしたい」という思いがありました。その目標を達成するために1年間取り組んでみて、年度末の振り返りの際に、ロードマップで理想の状態と現状の分析をしてみたという経緯です。
この振り返りの過程で気付いたのは、急変対応時のリーダーの役割についてきちんと定義していなかったな、ということです。私たちは「リーダーにはリーダーシップをとってほしい」と思っていたのですが、この「リーダーシップ」とは具体的に何を指しているのかが曖昧だったと思いました。改めてロードマップで分析をしてみると、私がリーダーシップという言葉で表現しようとしていたのは、具体的には「急変が起きた時に、人を集めて、動ける人を把握し、必要な役割を割り振る」ということだ、と言葉にすることができました。ロードマップを使って分析をしていくと、こうした言葉の定義の具体化もしていけるのだ、という手応えを感じました。

名古屋第二病院 ━━ ToDoの実行経過を詳細に書いたことによる気づき

平林:名古屋第二病院の大渡さんは、ToDoのところを非常に詳細に書かれていましたね。最初からこのようにしっかりと書いたうえで取り組みを開始したのでしょうか?

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 大渡:いえ、当初は最初の1行か2行かの、本当にざっくりしたことしか書いていませんでした。しかし、自分の頭の中には、ここに書いているような「それを実行するためにはこれとこれをしよう」といった考えがあり、実践した後でその内容をしっかり書き込んでいったという感じです。

平林:書いてみたことで、例えば副部長さんや係長さんとのやり取りの変化や、ご自身で気付いたことなどはありましたか?

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 大渡:しっかりと書いてみたことで、「他の部署でも真似できるようになるね」というようなフィードバックをいただけました。また、実践の際にPowerPointとかを使ったりしてプレゼンしたのですが、それは理解してもらいやすかったのかな、といった振り返りができるようになりました。

平林:MCを導入している、していないに関わらず、様々な施設の方のお話を聞いていると、計画をあまり書かず、師長さんの頭の中だけにプランがあるというパターンや、プランは書いているが、それが看護部や他の部署からは見えない、というものもあります。MCを推進する立場からいうと、このように他の部署からも見えるところにしっかり書いていただくことで、他の管理者の方が大渡さんのノウハウを真似して学ぶことができ、そういったところがMCの価値なのかなと思います。大渡さん自身にはインセンティブはないかもしれないですが(笑)。

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 大渡:ないですね(笑)。

平林:でも、このように詳細なプロセスを書いていただくと、他の人は実践しやすくてありがたいはずだと思います。

江南厚生病院 ━━ 課長と係長が話し合いながら進めた効果

平林:江南厚生病院の内藤さんは、今回改めて自部署の取り組みについて整理し直してみて、いかがでしたか?

江南厚生病院 内藤: Todoリストの中にはつい様々なことを書き込みたくなってしまうのですが、「実行したか、していない/できなかったか」をしっかり評価をしていくには、Todoリストはできるだけ簡単かつ明確にし、一つひとつステップを踏んでいくようにしていくといいかな、と思いました。
ただ、現実的には、「やったか、やらなかったか」だけで評価するのは難しい面もあります。例えば今回の発表内容でいえば、「二つの委員会だけ、ちゃんと報告が来るようになった」という結果になりました。では他の委員会の人たちはどうだったのか、と評価したりアプローチしたりしていくためにはTodoリストをもっと細かくしていくべきだったかな、というのは、平林先生と発表前に打ち合わせをしながら感じたことです。

平林:江南厚生病院の内藤さんに対して、「委員ごとに、1年間の目標を立てたというお話がありました。この目標を達成していくために、どのような支援をされたのですか?委員が抱える問題は多いと思うので、それについて、一緒にPDPをやっていこう、といったことを考えられていたのでしょうか?」という質問が来ています。これについてはいかがですか?

江南厚生病院 内藤:いえ、まだ、PDPするところまではできていません。まず、委員が主体的になれるように、今年度の目標と、達成のための計画を立ててもらい、休憩室に貼り出しました。それは、貼り出したものをみんなで見てもらうことで、他のスタッフを巻き込んで実践できるようにしていきたい、という目的で行っていました。
今回は貼り出して、みんなに見えるようにするというところまでは達成できたのですが、その先の、具体的に実行していく部分にはまだあまり進めていません。そのあたりは、次年度以降の課題として引き続き取り組みを続けていこうと思っています。その取り組みをする中で、委員会の活動で何か問題があれば、PDPを一緒にやるという選択も出てくるのかな、と思います。

平林:これはどちらかというと、委員会活動を見える化するという、管理者側のプロジェクトとして今回は取り組んだ、ということですよね?

江南厚生病院 内藤:はい、そうです。課長である私と、係長2名の3人で、今年度に目標に向けた取り組みを始める前に、どのように達成していこうかとロードマップを一緒に考えました。今回は、その内容について発表しました。

平林:係長さんとしては、一緒に目標に取り組む過程で、課長さんの考えていることはわかりやすくなりましたか?それとも、以前からこういう話はしていて、なんとなく課長さんの考えや、やっていくべきことはわかっていたのでしょうか?

江南厚生病院 丸山(係長):一緒に話し合いながら進めていったので、どんなことをやっていくのか、というのは常に明確になっていました。

平林:細かいToDoを書くことで、やるべきことが明確になり、伝わりやすくなるということはありますよね。
ただ、むしろ普段から良い関係性が築けていて、しっかり話ができたり、連携が取れている上司・部下の場合、つい記録に残さなくなってしまうのですよね。「書かなくてもわかるでしょ」と言いたくなってしまう。もちろん、私たちとしては、しっかり言葉にして、書いて残したほうがいいのではないかと思っているのですが、書くことにはそれなりに労力もかかるので、難しいところだなと思います。係長さんとしては、一個ずつ小さいPDCAを書いてあることで良かったと感じたことや、もしくは大変だと感じたことなどはありますか?

江南厚生病院 丸山:病棟全体のMCチャート以外に、固定チームの活動もチャートで管理していまして、チーム会の時にチャートを開いて、サマリーを確認したり、ステップを修正したり、というのを日頃やっていました。そのように、MCチャートを開いて課長・係長で見るということを繰り返すうちに、なんとなく「今年はここに向かって活動していくんだな」と意識することがだいぶできるようになってきたと感じています。
実際のチーム活動においても、チームリーダーが必ずチャートに戻って、リーダー会の前に係長に対して「小チーム活動を今月はこういうふうにやっていこうと思っているけど、どうか?」と相談できるような仕組みになってきています。その部分はすごく進歩したと感じています。

江南厚生病院 内藤:月に1回でもMCのチャートを見るという場があれば、「これはやっているのか、やってないのか」を一つひとつ確認していくことができると日々感じているところです。

近畿大学病院 ━━ MCチャートを取り入れたことで見えてきたもの

平林:近畿大学病院の発表で、「MCチャートの前は、SWOT分析をしていた」とおっしゃっていました。これについて、「MCチャートを取り入れたことで見えてきたことや、やりやすくなったことがあれば、教えてほしいです」という質問が来ています。

近畿大学病院 五島:当院はMCチャートを今年度から導入したばかりなので、まだ使い切れていないのですが…。ただ、SWOT分析は、自分の部署の強み・弱みを分析して、戦略を立てていきますよね。ただ、それが一人ひとりのやりがいにつながるかというと、そこからは少しずれてしまうところがあったのかな、と思っています。午前中のセミナーで言われていたように、「ちょっと頑張ったらできる」というような小さなPDCAを回して、日々やりがいや喜びを感じながら、それを積み重ねて大きな目標を達成していくというところが、MCチャートの良いところかなと感じました。

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