江南厚生病院
「病棟における委員会活動の活性化に向けた取り組み」
発表者:内藤圭子看護課長
子ども医療センター病棟では「看護部の委員会に所属するスタッフたちに、もっと主体的に委員会活動に取り組んでほしい」という思いのもと、ロードマップを展開しました。目標は「スタッフを巻き込んだ委員会活動ができる」という表現に具体化されました。取り組みの結果、委員会の活動内容が以前より管理者やスタッフに報告・共有されるようになり、管理者が活動を支援しやすい環境になってきています。
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子ども医療センター病棟の今年度の取り組み
本日は、江南厚生病院の子ども医療センターの活動について紹介します。
江南厚生病院の子ども医療センターのチャートは、三つのチャートが作成されています。
一つは子ども医療センターの病棟のチャートで、残りは二つの固定チーム活動のチャートです。
今回は、その中の子ども医療センター病棟のチャートについて説明させていただきます。
病棟の目標とロードマップ
今年度の取り組みの前に、MCサーベイにより部署の状況を確認しました。サーベイの結果では、部署のスタッフの健康状態は良く前向きな気持ちでいるので、MCチャートの左上、つまり発展的な課題に取り組めるコンディションである、ということでした。しかし、日頃スタッフと関わっていると、自発的に課題に取り組む姿勢が強いようには思えず、主体的に活動するためには、動機付けやサポートの支援が必要だと感じていました。
例えば、部署には看護部の委員会に所属するスタッフが何人かいるのですが、その委員会でどういった活動をしているのかが私たちにはなかなか見えてこないため、「もしかして、委員会の会議の場などにただ参加するだけになっているのではないか?」と思っていました。また、委員会の中で決まったことをただ部署におろしてくるだけではなく、スタッフみんなで自主的に実践できるようにしたい、とも思っていました。
そこで、今年度の初めに、係長と「委員会活動が主体的に行えるようになるといいね」「委員会活動の動きが見えるようにしたいね」と話し合い、以下のように目標を立てました。「委員会活動の動きが見える活動が行える」という目標を立てました。
そして年度の初めに、係長と次のようなロードマップを作成しました。
(図1)子ども医療センター病院のロードマップ
ロードマップ作成の過程
まず、上に挙げたロードマップが出来上がるまでの過程についてお話しします。
最初に、目標が達成された状態と現状の差を分析していき、以下のような項目が挙がりました。
●スタッフへ委員会の活動が周知されていないため、活動内容が病棟スタッフに伝わっていない。
●病棟の中で、それぞれの委員会の活動における現状分析・課題が導き出せていない。
●自己の役割の理解が十分に出来ていない。
そしてステップ設計は、次のようにしました。
●病棟スタッフに、委員会の活動内容を伝えられる。
●一年の活動の目標が明確になる。
●病棟委員としての役割が果たせる。
この時点での最終的な目標は、最初に立てた「委員会の動きが見える活動が行える」のままだったのですが、平林先生から「ここで設計したステップを一つひとつ踏んでいったら、当初立てた目標よりさらに具体的な目標のイメージが見えてくるはずだ。それを踏まえて、最初の目標を再検討して表現を改めると良い 」というアドバイスがありました。そこで目標の再検討を行ったところ、私たちはステップ設計の際に、「スタッフを巻き込んだ委員会活動をしてほしい」ということをイメージしていたのだと気付き、次のように目標を書き換えました。
「委員会活動の動きが見える活動が行える」
→「スタッフみんなが委員会の活動を知ることで、委員会活動に参画できる」「スタッフを巻き込んだ委員会活動が行える」
方策の策定と実行
次に、ロードマップのステップごとに、どのようなToDoに落とし込んで実行していったかについて一つずつ説明していきます。
(図2)ステップ設計
最初の「毎月、委員会の後、その日の管理者に報告ができる」というステップにおいては、まず係長に、「病棟カンファレンスの中で、スタッフに対して、『委員会に出席した後はその日の管理者に報告する』ということを伝えてほしい」と伝えました。そして、「委員会活動報告表」を係長に作成してもらい、報告内容を共有するようにしました。
その結果、委員会活動の内容は報告されるようになったのですが、月日が経つにつれて、きちんと報告する委員と報告しない委員が固定化されるようになってしまいました。
報告してくれる委員については、委員会でどういう活動がなされているのか把握できるようになりました。また、委員会の内容を報告してくれる機会が増えたことで、課長のほうから質問することもできるようになり、委員会活動への支援や組織的な活動などが少しやりやすくなってきたように感じています。
次のステップの、「病棟スタッフに、委員会の活動内容を伝えられる」に対してのToDoとしては、病棟カンファレンスの時に、「他のスタッフに対して委員会活動の報告を毎回必ず行える方策はないか」と、スタッフと一緒に検討しました。そしてスタッフから、「月2回の病棟カンファレンスに必ず出勤しているとは限らないので、朝礼などの機会を利用して報告していく」という意見が出ました。そして、係長が作成した委員会活動報告表で、報告が毎回実践できているか確認するとともに、伝達はいつ・誰が・どこで行うか、管理者へ報告された際に確認することにしました。
実行した結果としては、委員会後に管理者にちゃんと報告がされていれば、いつ・どこで・誰が伝達するかを確認でき、スタッフに伝わるようになりました。しかし、報告がないと、スタッフに伝達されないままになることがありました。そして、やはり報告・伝達をしっかり行う委員はだんだん固定されていってしまいました。
しかし、なぜ報告や伝達をすることが全ての委員に定着しないのかというと、必ずしも毎回伝達すべき内容があるとは限らないということも考えられます。そのため、毎回必ず伝達するように強いるのではなく、また口頭以外にも伝達方法がないか、今後検討していければと考えております。
次のステップの「一年の活動目標が明確になる」については、年度の初めに、各委員に一年間の活動目標と行動計画を立てて入力するように促しました。そして、入力された各委員会の目標を休憩室に貼り出し、他のスタッフにも活動内容が見えるようにしました。
入力の期限は当初は5月11日までだったのですが、なかなか入力できない委員もいました。最終的には、8月末に全ての委員会の目標と行動計画を貼り出すことができました。貼り出したものが休憩中に目に留まる場所に貼られていることから、他のスタッフにも活動の方向性が伝わるといいなと考えていますが、これについては十分な評価ができていないのが現状です。
また、目標を立てっぱなしになってしまいがちなので、次年度は、目標を立てる過程をもっと大事にしたいと思います。目標を委員一人で決めるのではなくて、ペアスタッフや管理者も加わり、対話を通して立案すれば、私たち管理者の思いも今以上に伝わって、互いの考えも確認できて良いように思います。そうすることで、年度の中間の評価をもっとしやすくなるのでは、とも考えています。
最後の「病棟委員としての役割が果たせる」というステップでは、休憩室に張り出した活動について、ペアスタッフなどを巻き込んで計画的に実践していくことにしました。
「スタッフみんなが委員会の活動を知ることで、委員会活動に参画できる」「スタッフを巻き込んだ委員会活動が行える」という最終的なゴールを達成できたかについて評価すると、まず防災委員会と医療安全委員会の二つの活動では、毎月しっかりと報告ができており、他のスタッフを巻き込みながら自主的に取り組むことができるようになってきています。しかし、他の委員会においては、中央から依頼されていることを行うことはしているのですが、病棟内で主体的に行うことはまだ見えてこないように感じております。
取り組みの成果と反省点
このように、私たちは「委員会活動の動きが見える活動にしたい」という目標を挙げ、ロードマップに沿って一年間取り組みを続けてきました。
病棟委員会は八つがあるのですが、そのうち二つの委員では、毎回委員会の内容を確実に報告してくれるようになりました。何らかの報告があることで、管理者としての支援がしやすくなったと感じています。
その他の委員会も、毎回ではないのですが、取り組む前よりは管理者に報告するようになってきています。今後この働きかけを継続・改善しながら、さらに他の委員会から報告がなされるように介入していければ、もっと良くなるかな、と考えています。
また、もう一つの成果は、それぞれの委員会の目標と計画を休憩室に掲示する取り組みをしたことによって、8委員会全ての活動内容が見える化されたことです。
反省点については、三つ挙げられます。1点目は、ロードマップのステップで「一年の活動目標が明確になる」や「病棟委員としての役割が果たせる」などのステップを挙げていましたが、「明確になる」「役割が果たせる」というところが、もう少し具体的な表現にすると良かったかなと思っています。
2点目、全ての委員会の委員が毎回報告できるようにはならなかった原因として、各ステップに対するToDoの具体性が少し低かったように思っています。管理者から各委員に働きかけていくところについては、ToDoの中でその働きかけの具体的に挙げることができていました。しかし、各委員が管理者に報告できるようになったかどうかチェックする、などのToDoが細かく設計されていなかったので、そのあたりも細かく具体的に設計できていれば、他の委員の報告ももう少し増えたのではないかと考えています。また、計画は具体的になればなるほど、実践しやすく、評価もしやすくなるため、今後は計画立案時にもう少し具体的な計画が立てられるように、注意していきたいと思っています。
3点目は、日々の仕事に流されてしまい、課長・係長間で中間評価ができなかったことも反省点です。「年度の途中で係長さんにやってほしいこと」や、「係長との中間の振り返りミーティングを入れる」といったことをあらかじめToDoの中に入れておけば、忘れずに実践できたように思います。次年度は、このような内容をさらにブラッシュアップして、継続していきたいと思っております。
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