【報告】MCシンポジウム管理実践報告 ④【座談会】看護部が「学習する組織」になる

MCシンポジウム
第2部(13:00~16:15)
座談会 「看護部が『学習する組織』になる」

江南厚生病院 今井智香江副看護部長、今枝加与副看護部長
三重大学医学部附属病院 江藤由美看護部長、森多佳美副看護部長
有限会社ノトコード 平林慶史

2023年3月のMCシンポジウムにおいて、参加施設の発表を受けて、マネジメント・コンパスを先進的に導入している江南厚生病院・三重大学医学部附属病院と、ノトコードの平林で座談会を行いました。

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シンポジウムの感想

平林:まずは、今回のシンポジウムの感想をお願いします。

江南厚生病院 今枝:小さな成功体験の積み重ねが、達成感でどんどんワクワクに繋がるという、具体の大切さを今日改めて感じました。具体的で小さなことであれば、「コツコツ確実にやっていくぞ」という気持ちになり、それが「ワクワク」や達成感につながっていくという感覚があります。

江南厚生病院 今井:同じツールを使っていても、それぞれの人の色々な工夫により、様々な使い方があるのだということをすごく感じました。また、みんな同じようなことで悩んでいるんだ、自分たちだけではないんだということがわかり、他の施設の発表が本当に参考になりました。

三重大学医学部附属病院 江藤:私は、委員会活動でMCチャートを使うことは良いのではないかと思いました。委員会活動は、普段の業務で関わりが薄く、あまり会話をしない師長や副師長たちが集まり、会議の時間もどうしても1回1時間程度しか確保できないため、毎回「何だったっけ?」という感じで始まってしまう印象が私自身もあります。MCチャートを使うと効率的に確実に進められるのではと、非常に参考になりました。

三重大学医学部附属病院 森:MCチャートの導入をスタートしたばかりの施設から、何年もやってきたところまで、色々な施設がありましたが、皆たどっていく道は同じだということをすごく感じました。目指しているところは皆同じで、「現場をどう良くしよう」「どう理解しよう」と考えていることがよくわかりました。やはり、MCを院内に根付かせていくには、時間と経験を積み重ねることが非常に大事だと思いました。

副部長と師長の関わり方

平林:石巻赤十字病院の奥田さんの発表の最後のスライドでは、これから行いたいこととして、「計画立案の時も看護副部長が看護師長と対話の時間を持つ」と挙げておられましたね。

(図)石巻赤十字病院「私たちが考えた方策」

師長にある程度自律性を求めるなかで、副部長がどこまで部署に介入するかというのは、非常に難しいところだと思うのです。副部長と師長の関係をどのようにするのが良い塩梅か、今までの試行錯誤の中で行き着いたものがあれば教えていただけますか?

江南厚生病院 今枝:ちょうど明日、次年度の目標設定のための集まりがあります。今年からは、集まる部署と集まらない部署があるのですが、集まらない部署は通常の日勤の時間帯に関わるようにしています。つまり、MCチャートを組み立てるという最初のところは、どの部署も一律に関わるという対応をしています。
その後は、課長さんや部署のレディネスにもよるとは思いますが、細かい計画のところまで介入する部署としない部署があるように思います。それでも、非常に細かいアクションプランのところまでは入りません。私が入るとすると、ロードマップの作成と、ロードマップからステップ設計のところあたりです。

江南厚生病院 今井:目標を決めていく時に、最初に外発・目標として、管理室から期待していることをある程度は述べます。ただ、それを伝えたうえで部署の状況を聞き取ると、今の時点でできていることもあれば、できていないこともあると思います。その部署が、今どのくらいまでできているか、どのあたりを実際の目標にするかについては対話しながら相談することが必要になってくると思います。目標を立案する際、迷うところがある場合は、現場からちゃんとSOSが出てきますから、その時点で「一緒に決めていこうね」と介入していくという感じです。
それを受けて、現場がどんなことに取り組むかということについては、現場の人たちの間で相談しながら具体的にしていってもらっています。

三重大学医学部附属病院 森:まずは左上の外発・目標、つまり看護部の方針を下ろしていく時は、副部長の中でしっかりと練ってから各部署に下ろしていきます。師長とはどこまで関わるかというと、もちろん師長さんの経験にもよりますが、皆最初は曖昧でふわっとした言葉で言い始めることが多いのです。そうしたふわっとした言葉をきちんとした具体的な言葉にして、お互いが納得して合意するところまで落としていく、という作業は丁寧に行うようにしています。話し合った後に「MCチャートには良い文章が載るように適当に自分で考えてね」と任せてしまうのではなく、MCチャートにちゃんとした文章が書かれるようになるところまでは一緒に考えるようにしています。
その後、計画を立ててステップを踏んでいくところは、ある程度は現場に任せていることが多いです。MCチャートに書く言葉をただ決めるのではなく、師長も私たちと同じ景色が見えるようになっているな、というところまで話を進め、そこから先は自分たちでステップを踏んでいけそうだと思ったら手を離していく、という感じですね。
ですが、任せっぱなしというわけではありません。先ほど江南厚生病院さんも言われましたが、現場からSOSが出たり、「ちょっと一緒にやってほしい」といった要望があったりする場合は一緒に行うことになると思います。また、副部長側で「どうなったか気になるな」と思うことは、時間が許す限りもう1回声をかけるようにしています。なかなか時間を割くのは難しいのですが…。
チャートの右上、部署の師長自身の自発・目標については、副部長と師長が話し合う時には、師長がすでに立て始めていることも多いです。そこで、やはり副部長と師長で同じ景色が見えるようになるまで対話的に話をするという感じで進めています。

「他者」から支援してもらうための仕掛け

平林:ここまでの議論を聞いていて思ったのですが、師長は副部長だけではなく、自部署の副師長・主任のことも、もっと「他者」として手伝ってもらうようにしたら良いのではないでしょうか?
PDPもMCチャートも、進めていくためには他者の存在が重要ですよね。自分一人でPDPをやるのは非常に難しいですし、MCチャートも、師長が自分一人で作ろうと思うととても大変で、何を書いていいのか分からなくなって、だんだん頭の中がごちゃごちゃになってしまう、ということはよく起こると思うのです。ですから、「ちょっと私のやりたいことを聞いて」とか「私の頭がごちゃごちゃしているから、ちょっと整理してくれないかな」などといって、副師長や主任といった「他者」を活用して、チャートを一緒に作っていく、という感じです。
なぜ副師長や主任の力を借りたほうがいいかというと、副部長とだけ話し合いをしていると、副師長と師長が同じ景色が見えてきて、ビジョンを共有し、「よし、これから一緒にやっていこう」となった瞬間に、両者は「we」つまり「私たち」になってしまい、急に他者がいなくなってしまうのではないかと思うからです。また、副部長は師長と関わる際、「上司」という側面と、単なる「他者」としての側面を使い分けなければならず、しかしこの切り分けはすごく難しいと思うのです。ですから、そうした上下関係をあまり意識しすぎない立場で、ちょっと冷静に「その言葉はそれでは分かりません」とか、「本当にその計画で大丈夫?『す・じ・こ』になっている?」というふうに外から意見してくれる人がいた方がいいと思うのです。
これについて、みなさんの意見はいかがでしょうか?

江南厚生病院 今枝:どちらかといえば、課長と係長が事前に目標をある程度考えて出してきてくれるのですが、それは2人の中でわかりあった世界であり、私からはその景色がまだ見えていない、という状態になることが多いです。
「上司」という側面と「他者」としての側面を切り分けるという点については、具体的な事柄を目の前にした時は、上下の関係は薄くなると感じます。そこにあるものは事実であり、良し悪しや優劣は含まれないため、上司と部下の関係性が目に見えて出にくいと思っています。ですから、課長が何か考えていることがあった時は、「それはどういうこと?教えて!」と副部長の側も興味を持って聞き出すことを心がけています。課長の見えている景色についてできるだけ具体的に聞くことで、「上司から責められている」といった感覚や、「何か上からごちゃごちゃと言われたな」といった感覚がなくなるのではないかと思っています。

三重大学医学部附属病院 森:同じ景色を見て、目指すものがある程度はっきり具体的になれば、「他者」としての支援の全てを副部長が担うことはないのかなと思います。
また、やはり上司は上司であり、そこの垣根を取り払うことは難しいと思うところはあります。当院の場合は師長同士のファシリテーションの仕組みがあるので、どうしても他者が必要ならばそこで助け合うことはあるようです。わからないことを副部長に聞くということはありますが、そんなに副部長だけが支援を担っているわけではないという気がします。

江南厚生病院 今枝:三重大学医学部附属病院さんは、当院より先にMCを始められていて、一歩先を行ってらっしゃいます。当院は、課長同士で助け合う仕組みがまだうまくいっていないなと感じました。そこを上手に使えるようになると、困ったことに対してチームでもっと具体的に取り組めて、課長さんたちの孤独感も少なくなっていくと思いました。先ほどの発表も聞いていて、師長さんたち同士の会話に支え合いがあることがすごく羨ましく感じました。当院でも次の段階で目指していきたいところだと思っています。

三重大学医学部附属病院 森:仕組みは作っているものの、実際はそんなに素晴らしい実践をできているわけではなく、皆苦労しながら試行錯誤や切磋琢磨をしています。「一人でやるのが心配なら、何人かで集まってやってみよう」といった工夫もしています。ただ、「まずは自分たちで1回考えてみてやってみよう」といった文化も少しずつできているように思います。

江南厚生病院 今枝:安心感がポイントなのだと思います。「こんなことで困っていていいのかな」と思ってしまって、上司には言いにくいことでも、課長さんたち同士だったら言いやすいということもあるかもしれないので、横のつながりで安心感を作ることはすごく良いことだと改めて思いました。

三重大学医学部附属病院 江藤:当院でも、他の副部長が「師長さんはうまく使い分けているよね」と言っていました。副部長さんに相談することと、他の師長さんに相談することを、うまく使い分けているんじゃないかなと思いました。

平林:これから話すことについては、実は私の中で、まだあまり考えを練ってまとめることができていないのですが…。マネジメント・コンパスは2018年の夏ぐらいに開発して、今年でちょうど5年目になりますが、こうして長年活動を続ける中で、最近は「他者」というのがマネジメントのキーワードではないかと考えるようになりました。「他者」という言葉、「仲間」という言葉や「チーム」という言葉、この辺りが大きなキーワードなのではないか、と。
みんな寂しいし、不安だし、わかってほしいし、共感してほしいし、仲間が欲しいのです。でも、仲間になればなるほど、他者性が下がっていき、ドツボにはまる時もみんなで一緒にドツボにはまってしまうことになります。
ですからまず、「一人じゃないよ」という安心感や、「みんなでやればできるんだ」というようなチームの心強さをどうやって作るかというところが大事になる。その次の段階では、ちょっと離れた立場に立って、「しっかり論理的・分析的に物事を見ようね」と促す。この、「仲間」と「他者」との間を行ったり来たりする営みを、どうやって担保するかというのがすごく大事なのではないかと感じています。そして、これは看護管理に限らず、他の分野にもあてはまる話ではないかと思います。
PDPの仕掛けやMCチャートの仕掛けも、「他者性」を管理の中にどう組み込んでいくかという戦略の中の一つのアプローチなのかな、と感じているところです。

江南厚生病院 今枝:たしかに、外の研修会に行って、全く知らない人たち同士でやるPDPは、整理されているという印象があるのですが、自分の病院の中でやる時は、いまひとつスッキリしないことも多いのです。全く知らない人同士であれば他者性は高まるけれど、自分の病院の場合は周囲がすでに仲間やチームになってしまっているから、他者性の部分が弱くなってスッキリしないのかもしれないと思いました。
ではどうしたら「他者」として関わる部分と、「仲間」として関わる部分を分けてやっていけるのかについては、全然わからないのですが…。

平林:難しいですよね。

三重大学医学部附属病院 江藤:管理的な答えにはなりませんが、例えば現場で患者さんに接するということを考えると、きちんと知識を持って説明してくれる看護師さんも欲しいけれど、ある時は話だけを聞いてくれる優しい看護師さんが欲しい、というように、色々な立場の人がいてもいいのかなと思っています。
患者さんだって、しっかりした看護師さんばかりだと怖いと思うのと同じで、管理者もみんなが同じだと怖いと思うのです。本当に、共感だけしてくれて「仲間なんだ!」と思えることも大事ですし、このままではちょっと進んでいかないな、と感じた時は、突き放した感じでそれを言う人が必要でしょう。でも、それは同じ人ではなくて良く、色々な役割をする色々な管理者が必要なのではないかと思います。
これは台本なしの座談会の場だから、思いつきを適当に話しているのですが(笑)、どうでしょうか?

三重大学医学部附属病院 森:「こうじゃないといけない」ということはないかなと思います。元々が正解のない世界の話なので、なんでもありかなと思うのです。それぐらいの気持ちでやったほうが、うまくいくような気がします。

江南厚生病院 今枝:ゆるくゆるく、ですね。

江南厚生病院 今井:個性がいっぱいあって、みんなで頑張れるというのがいいなと思います。

平林:そうなのですよね。私たちが「学習する組織になるための道筋」として示しているステップの中に「安心」というのがありますが、これは「一緒だよね」と皆で言い合っているという、いわば「ぬるま湯」の世界でもあるのですよね。しかし論理的思考は、そうした「仲間」という関係よりはちょっと距離を置くものです。対話というのは、他者性というのを念頭には置きつつも、互いに近づいたり離れたり、「わかり合える」という同質性と、「それではわからない」という他者性を行ったり来たりする営みなのではないかと思います。
これは看護管理に限らないと思うのですが、そういう行ったり来たりというのは、どちらかに行ったままにならずに、行ったり来たりというのを意識していく中に見えてくるものがあるんだろうなと思っているのですが、難しい話になってしまいましたね。

江南厚生病院 今枝:あまり具体な話ではなくなってきたので、聞いている皆さんは大丈夫かな(協働学習会に参加している施設はいつもの話題からどんなことを話しているかわかるけれど、初めて聞く方は何を話しているのかわからないのではないか)と不安になりました(笑)。

平林:そうですね、ご指摘ありがとうございます(笑)。
この協働学習会はそろそろ2年半ぐらいになりますが、最初はこの座談会のように、皆でざっくばらんに話し合うという雰囲気ではありませんでした。協働学習会は、最初は5施設から始まり、今は8施設程度で月に1回行っているのですが、最近はこのように、「平林が言っていることが観念的で分かりにくくなってきたから、もっと戻しましょう」などと、私に対しても率直に突っ込んでいただけるようになりました(笑)。
毎月、思ったことを色々と話し合っていると、毎回議事録が数ページになるのです。このように他の施設の方と忌憚なく話し合うことは、参加者全員の学びにもなっていると思いますし、私自身もそれによってすごく助けられています。
やはり、それぞれの施設の中でも、他者に触れて他者から学ぶというようなきっかけをどうやって作るのかというところがキーポイントなのだと思います。MCチャートは、同じ施設であれば他の部署のチャートも見られるようになっているのですが、私としては、本当は他の病院のMCチャートも見られるようにしたいぐらいです。もちろん、情報管理の面から難しいということはわかっているのですが、もっと気軽に他施設同士で学び合いを共有できるような仕掛けができれば、と思うことがすごく多いのです。今日はお互いの取り組みが交換できて、大変興味深く嬉しく思います。

目標管理とMCチャートの棲み分け

平林:次に、「当院で元々実施していた目標管理シートと、MCチャートの二つを、今後どのように棲み分けしていくかという課題があります。何かアドバイスはありますか?」という質問が来ています。本日の発表*で、信州大学病院さんが悩んでおられたことと同じですね。
MCに取り組んでいくにあたって、今までの目標管理とどう棲み分けていけばいいかということは、いろいろなところで聞かれる質問です。いかがでしょうか?

三重大学医学部附属病院 森:目標管理とMCチャートは、両方とも目標達成のためのものです。どちらか一つにしぼり、MCチャートを導入するなら目標管理をやめてチャート一本になるように移行していったほうがよいと思います。
もちろん、今まで続いていたことを変えるとそれに対する戸惑いは数年続きますが、その戸惑いを感じつつも、徐々に定着させていくことを目指したほうがいいのかなという気持ちはします。二つを並行してやっていくのは無理だと思います。

三重大学医学部附属病院 江藤: MCチャートをやるのであれば、両方ではなくて、それまでやっていたいわゆる目標管理はやめたほうがいいと、当院の経験上から思う、ということですね。

三重大学医学部附属病院 森:はい。当院の場合は、です。

平林:江南厚生病院さんはどうですか?

江南厚生病院 今枝:目標管理と同じように、MCチャートにも目標と課題が挙がり、取り組むべきことは掲げられています。当院では、MCチャートに挙げたことを、そのまま目標マネジメントの個人目標管理シートに挙げている人がいます。特に、MCチャートの右上の「自発・目標」が、そのまま年度の病棟の目標になることがあるのです。当院の場合、目標管理をする際に、目標を明確にするためにMCチャートを使っているといえます。
MCチャートの中には、特にPDPなどはサクサク解決していけるものもあって、年間目標にはならないものもあるかもしれませんが、目標を挙げてそれについて取り組むというところについては「目標管理とMCチャートが重複している」という感じはない気がします。

江南厚生病院 今井:病院として「やらねば・ならねば」という上から下ろされた目標もあるので、そこは「外発・目標」のところに記し、目標管理とMCチャートとをうまくリンクさせながら使っていくことなのだろうな、と個人的には思っています。

江南厚生病院 祖父江:当院の場合は、MCチャートを部署の目標管理に活用しています。そして、この部署の目標に向かって、個人がどのように目標を立てて動くかという個人の目標管理を行うのが、「目標マネジメント」の個人目標管理シートになっています。そのように棲み分けをすることで、院内全体の目標、部門の目標、部署の目標、個人の目標が連携し、つながるようになっているのではないかなと思います。

平林:病院によってどういう仕組みを取っているかが異なっているんですね。管理者として看護師として、病院職員としての個人の目標管理が一つあって、それと並行してMCチャートで組織の目標とか課題を管理している、というのが江南厚生病院さんのスタイルということですね。三重大学医学部附属病院さんは、個人の目標管理は今行っていないということですか?

三重大学医学部附属病院 江藤:はい。正式には。

三重大学医学部附属病院 森:紙に書いて示すというようなことはしていません。

平林:おそらく、BSCなどを使って部署レベルの目標管理をやっている組織もきっとあると思います。目標管理のやり方が、組織によって全然違うんだろうなと感じます。そして、少なくとも部署レベルの、例えばBSCに準拠したような目標管理とMCチャートとを両方やったら混乱するので、それはやめたほうがいいのではというのが、さっきの江藤さんのご意見だと思いますし、私もそう思います。
個人的には、目標管理はできるだけ少なくしていったほうが良いのではないか、と思っています。むしろ、目標だけではなく、問題も含めた部署の課題の全体を見せるようにする。「管理」というより、みんなに見えている状態にすることが大事かと思います。
現実的ではないとは思いますが、本当は、一人一人のスタッフがMCチャートを持っていてもいいぐらいなのですよね。「私はこうなりたい」とか、「あなたにはこうなることを期待している」とか、「あなたのこの部分は問題ですね」ということを可視化しておいて、毎回面談で使えばいいのかもしれません。もちろん、そこまでやったら非常に大変なので、実現性は低いと思うのですが。

施設を超えた学び合いの場を作る

平林:ちなみに今回、このシンポジウムを行う前に、発表者の皆さんと、個別に1~2回やりとりさせていただきました。私が「他者」として関わって支援する、という状況が生まれていたわけですね。
ありがたいことに、「平林先生」などと呼んでいただける立場ではありますが、このように「他者」として関わるのは、私以外の人も十分に可能だという気がしています。例えば、このようなシンポジウムがまた開かれるとして、事前に他の施設同士で予演会などをすることもできるかなと思うのです。「うちはこうなんだけど」と発表して、質問して理解を深めていき、施設が違うことを利用して「他者」同士で学び合うような機会ができたらと、今日のシンポジウムを通して感じました。これについて、みなさんの意見はいかがでしょうか?

江南厚生病院 今枝:今回は、各セクション3題ずつ発表して、最後にパネルディスカッションとして発表者同士で話し合ったことで、学び合いが深まったように感じました。協働学習会では毎月話し合っているのに、今回「そんな話は初めて聞いた」と思うこともあったので、とても良かったなと思います。今後は、(今回のシンポジウムのように)発表施設のどこかの仕切りで互いに学び合う場を設けていくという方法も良いかなと思います。

三重大学医学部附属病院 森:私も同じように思います。自分の部署や施設の中だけで話をするのではなく、他施設と交流をしながら色々な学び合いができたらいいな思いました。
三重県について紹介をすると、県事業として三重県の施設同士で学び合うことを行っており、今は3年目を終えたところです。しかし、活発な意見交換や学び合いといったところまではあまり進んでいませんでした。
気づきの共有、自分たちの思いや取り組みの具体的な内容、今困っていることなどについて、様々な意見交換をしたいと、今回他施設の方も言ってくださいましたが、私たちもそういうことは本当に必要だと思っています。

三重大学医学部附属病院 江藤:素朴な感想ではありますが、他の病院の方とこうやってお話しする機会はすごくいいなと思います。さきほど、「コロナ禍になって最近飲み会がない」というコメントがきていました。他施設の人たちとは飲み会もなかなかできないなか、こういう機会でお話しができると、「困っているのは自分たちだけではない」と安心ができます。参考になることもたくさんで、こういうことが学習する組織になるのですね?平林さん。

平林:「学習する組織」になろうと突き詰めていくと、「組織」というものがだんだん壊れていき、越境してしまうのだと思います。

まとめ

平林:さて、お時間となりました。色々な場所で、信頼関係が少しずつ築かれてコミュニティができ、色々な場所で色々な学び合いが生じるようになったら良いなと思っております。今協働学習会に参加されていない施設の方でも、「こういう学び合いの場は良いな」と思ったら、声をかけてください。今後も、どのようなかたちにするかはわかりませんが、施設を越えて一緒に学び合う機会を作っていこうと思っています。
協働学習会メンバーも、信州大学病院さんのようにまだ導入してから年数の浅い施設の方も参加してくださっています。様々な進み具合の人たちがいるということも皆の学びになるので、「うちの施設はまだ全然できていないから…」などと思わず、ぜひ一緒に学び合っていきましょう。
正直、学会よりこうした会の方が面白くないですか?(笑) 学会はどうしてもお堅い雰囲気になってしまうので、もっと緩い雰囲気で楽しくやりたいと思っているのです。本当は、今日のシンポジウムもまだまだ堅い感じがしていて、あと2段階くらいは緩くしていきたいです。緩い学び合いを、もっともっとやっていけたらと思っています。

三重大学医学部附属病院 森:三重県の中で県事業を進めていても、管理者は意外に頭が固いというか、殻を破るのに時間がかかるものだと感じます。と、このようなことを言えるというのも、私が少し殻を破れているという証拠なのかもしれません。もっと自由で率直に、色々な話ができるようになると、頭が柔らかくなってリフレクティブになれそうに感じます。
私は何年かMCの活動をしていますが、自分もこの活動を通じてどう変わるか?ということを考えるようになっています。それは、管理者にはすごく必要なことだと感じているところです。

平林:この座談会は特に、「ラジオ番組みたいなノリで」と思っておりましたので、参加者のみなさんが楽しく過ごしていただけていたら幸いです。また、今日発表してくださった皆さんも、座談会に参加してくださった皆さんも、本当にありがとうございました。

 

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