【報告】MCシンポジウム管理実践報告 ①現場の問題を解決する(PDP) 発表者によるパネルディスカッション

管理実践報告①現場の問題を解決する(PDP)
発表者によるパネルディスカッション

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PDPで「他者の視点」を取り入れるための工夫

三重大学医学部附属病院 河野:まず、日本赤十字社医療センターで発表いただいた件に関して、少しお話し合いをできればと思います。日赤医療センターの方は、何か聞きたいことやご意見はありますか?

日本赤十字社医療センター スミス:今回は、PDPの途中で行き詰まりを感じ、第三者の力を借りながら見直して、より詳しい「す・じ・こ」な解決策を立てるところまで分析していけた、ということを発表させていただきました。ただ、こうした発表の機会がなかったら、PDPの過程の振り返りを行わず、得られた気付きについてもスルーしていたかな、とも思います。第三者の意見は本当に大切だな、と今回改めて感じました。
そこで、三重大学病院の方々に伺いたいことがあります。発表の中で、「PDPでは、他の人の目が入ることが大切」ということが強調されていました。私も、本当にその通りだと思っているのですが、ファシリテーターの方や委員会の方といった第三者への相談を、いつでも・誰でも・どこでもできるような体制をとられているのでしょうか?そういった体制について教えていただければ、と思いました。

三重大学医学部附属病院 河野:石巻赤十字病院さんは、PDPチームが、メールで連絡をいただいたら決まった時間にファシリテートに入る、というかたちをとっていらっしゃることが、今日の発表を通じてわかりました。
当院では、委員会活動の一環として、3部署ごとに一つのチームとして、常にお互いにファシリテートをし合うという体制をとっています。同じチームの部署に依頼をすれば、ファシリテートに入っていただくこともできますし、ファシリテートをするうえで困ってしまったり、「ファシリテートが苦手なので他の慣れた人に入ってほしい」と思ったりした場合は、委員会のメンバーがファシリテートに入るなどの対応をしています。
また、院内にはすでにPDPやMCの一連の研修を終えてCNML(Clinical Nursing Management Leader)になっているメンバーもおり、そのメンバーがファシリテーションに入ることも可能になっています。
ただうちの病院も、一応、「頼んだらすぐにファシリテートできるよ」という体制は整えているものの、師長同士の時間を確保するのが難しくて、常にファシリテートを行えるというわけではない、というのが現状です。

日本赤十字社医療センター スミス:三重大学さんの委員会のメンバーも、ほとんどが師長さんとかそれ以上の職位の方かな、と思うのですが、その方々同士が相談し合ってPDPを展開されている、ということがわかりました。当センターでは、部署を超えて相談できるという体制が今までなかったので、今後はそういう部署横断的な相談の機会を作れるような仕掛けを考えていきたいと思いました。

三重大学医学部附属病院 河野:違う部署からファシリテーションに入ってもらったりすることで、違う視点でPDPの展開を見てもらうというのは、すごく大事だなと私たちも感じています。

「部署PR会」での副師長・係長の役割

三重大学医学部附属病院 河野:石巻赤十字病院さんも、PDPチームの活動に関して、第三者の意見をもとに少し視点を変えられて、チームへのコンサルテーション件数を増やすというよりは、係長さんの教育をしていきたいということで、そこに関して意見が欲しいとおっしゃっていましたね。今までのディスカッションや、2病院の発表を聞いて、何か思うことや、ご質問などはありますか?

石巻赤十字病院 利部:三重大学さんの部署PR会の取り組みは、非常に参考になると感じました。三重大学さんでは、部署PR会で実際にプレゼンテーションするのは、師長さんなのでしょうか?PR会において、係長さんたちや副師長さんたちがどのような役割を担っているのか教えていただきたいです。

三重大学医学部附属病院 河野:部署PR会は、師長には基本的には全員参加してもらっています。副師長については、副師長ミーティングの日に発表を行っているということもあり、半数くらいには常に参加してもらっていますが、残りの人については参加できる範囲で参加をお願いしています。
だいたいは師長が発表してくれていますが、最近は副師長さんがプレゼンをしてくれる部署も出てきました。アクションプランを立てる時には、実際には副師長がかなり関わってくれているので、副師長が発表する時には、プランの内容や、それを実行してみた感想を細かく発表してくれることが多いかな、と感じています。

活発なディスカッションを行うための工夫と心理的安全性

三重大学医学部附属病院 河野:当院では、部署PR会を今はZoomで行っているということもあり、なかなか忌憚ないディスカッションが進まないと感じています。「こういうふうにしたら意見が出やすいんじゃないか?」といったアドバイスをいただけたらうれしいな、と思うのですが、いかがでしょうか?

石巻赤十字病院 利部:ディスカッションでなかなか忌憚ない意見を言い合えるようにならない、というのは当院においても課題になっているところです。
アドバイスではないのですが、三重大さんの発表で印象的だったのは、2枚目のシートで細分化をして、20項目も出てきたという段階で、困りごと整理シートにもう一度戻った、というところです。あれほどシートが出来上がってきている段階で、もう一度最初に戻るというのは勇気がいることだと思うのです。「戻ろう」と言い出せるというのは、心理的安全性が保たれているということなのかな、と思いました。PDPに取り組む時に、そういった安全な雰囲気で意見を出し合える環境があったのでしょうか?

三重大学医学部附属病院 中西:私は、当部署に異動して数カ月のところで、先ほど発表した問題に取り組み始めました。実際に自分がリーダーをやってみて、「本当にリーダーはとても大変なんだな」とか、「今までやっていたのと全然違うな」と感じました。細分化している時にも、「こんなにたくさんのことを、リーダーの人はしているんだ」と思いました。その過程で自分自身が、「リーダーって、本当にこんなにたくさんの業務を担わないといけないのか?」という思いがすごく強くなってきて、「この細分化でいいよね」と聞かれた時に、「うん」と言えなかったんです。それを見て、他の師長・副師長が私の意見を聞こうとしてくれて、そのおかげで言い出すことができました。元々当たり前とされていたことを変えようと思うことは、すごく難しいことだと思うのですが、私の気持ちを取り入れてくれて、話し合いをまたさらに深めてくれた、という経緯がありました。

石巻赤十字病院 利部:やはり、普段からのコミュニケーションがよく取れているんだな、と強く感じました。当院のPDPチームも、コンサルテーションの時だけではなく、日々のやりとりや関わりの中で、そういう心理的に安全な雰囲気を構築していく必要があるのだろうと思い、すごく勉強になりました。

副師長・係長の問題解決能力を伸ばすために

三重大学医学部附属病院 河野:今、シンポジウム参加者から「副部長が全ての病棟に関わるのはすごく大変なので、師長など同じ職位同士でファシリテートし合う仕組みは良い」というコメントをいただきました。当院は、PDPの際に副部長は入ってくれますが、基本的には師長同士でお互いに困りごとを共有し合い、学び合うという仕組みになっています。それは私自身もすごく良いことだと思っています。
ところで、石巻赤十字病院さんの発表で、「係長さんの問題解決能力にアプローチしていくというところについては、まだ解決策が見えていなくて困っている」ということを言われていました。それに対して、日赤医療センターの方は、何かアドバイスなどがありますか?

日本赤十字社医療センター スミス:アドバイスできるほどのものではないのですが…。当センターは、副師長もPDPやMCに関わっているのですが、師長同士でPDPやMCチャートを共有し合う場がなく、従ってもちろん副師長同士でも共有する場は設けられていません。今このシンポジウムに当センターの副師長も参加しているのですが、「どのようにすれば副師長同士で共有し合える、お互いに成長し合えると思うか」という点について話してもらおうと思います。

日本赤十字社医療センター 丸山:ただの感想になってしまうのですが、副師長の立場として思っていることをお伝えします。MCチャートを導入したことで、スタッフとの対話がすごく増えたと感じています。ただ、副師長という立場でMCチャートを使いこなす能力があるかというと、そこはやはり課題かなということも強く感じています。一回MCチャートを作ってみて、スタッフと共有して活用するということはできていると思うのですが、チャートを定期的に見直したり、優先順位を入れ替えたりできるような能力を身につけたいと、今回の発表を聞いてすごく感じました。

三重大学医学部附属病院 河野:副師長さんたちだけでPDPをやっていくとなると、すごく大変になってしまうと思います。ただ、副師長は現場で様々な実践をしてリーダーシップをとってくれる存在なので、その副師長たちが抱いている困りごとに耳を傾けつつ、師長が一緒にPDPを展開できるといいな、と私も感じました。今のお話で、日赤医療センターさんではそうやって一緒に取り組もうとされているようだったので、それはすごく良いことだと思います。

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