【報告】MCシンポジウム管理実践報告 ②部署の目標達成に取り組む(ロードマップ)-3

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院
「MCチャートを活用した実践報告 患者の『思い』ファーストの取り組み」

発表者:大渡佳世看護師長

「ACPの充実を図る」という自発目標を「日々の看護実践の中で、患者さんの『思い』を探ることができる」という具体的な表現に改め、様々なToDoを策定し実行したところ、年度末のMCサーベイで「スタッフが前向になった」という結果を得られました。また、ToDoの実行経過をアプリに詳細に記入していったことで、振り返りと評価がしやすくなりました。

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2021年度までの部署の状況

部署の概要と、2021年度までの状況

私の就任初年度からの部署の概要をまとめると、以下のようになります。

1病棟7階東の概要

●主な診療科:消化器内科全般、脳神経内外科の亜急性期
●患者の特性:高齢者が9割を占め、介護度が高い
→自他共に多忙な病棟として認知している
●病棟管理実績(2021年9月):病床稼働率93%、月間病床回転数3.5回、平均在院日数8.0日
●部署の雰囲気:退院支援に熱心
●サーベイ結果(2020年度末):慢性的に疲労感があり、へこたれている状態

一言でいうと、本当に忙しい部署です。「私たちだけ、なぜこんなに忙しいの?」という思いがあり、部署全体が「もうこれ以上は何もできません」という雰囲気に支配されていました。
忙しいがゆえに、様々なところで悪循環が発生していました。例えば、インシデントがあっても、その場で対処するだけで終わってしまい、次に同じようなことが起きないようにするための振り返りや共有、対策の検討などが全て後回しになっていており、その結果、似たようなインシデントがまた発生する、といったような状況でした。

2021年度の取り組みと、疲弊状態からの脱却

2020年のMCサーベイでも、「前向きな目標に向かっていくのではなく、まずはスタッフが感じている問題の解決に取り組んだほうが良い」というコメントがありました。そこで、2021年度には、主に教育の在り方の改善と、予約入院の患者さんの増加に取り組みました。
教育の在り方の改善については、新人看護師がしっかり育つことで部署全体に時間的ゆとりが生まれ、有給休暇の増加や係活動の時間の確保ができるだろうというねらいがありました。また、予約入院の患者さんが増えることについては、自立した患者さんが増加するということになり、スタッフの負担軽減につながるだろうというねらいがありました。
予約入院の患者の増加については、スタッフにとっても、その重要性が非常に実感しやすい内容だったこともあり、成果を上げることができました。一方で、教育の在り方の改善に関しては、「これまでこのやり方で何も言われてこなかったのに、なぜ急にこんなことを言われなければならないのか?」という反発がありました。しかし、まず教育や研修を受けた新人看護師の感想が、非常に良いものへと変化するようになりました。そして、新人がしっかり育つことで生まれる時間的ゆとりを、スタッフ全員が次第に実感するようになり、指導スタッフの思いや態度も変化していきました。
その結果として、2021年度末に実施したMCサーベイでは、満足度が落ち込むことなく横ばいになりました。また、新人から「教育環境が院内で一番」という評価を得ました。長期休暇・休職をするスタッフや、3月末の退職者もゼロになりました。
このことから、「当部署は疲弊状態から脱出できた」と判断しました。そこで今年度は、問題解決をするのではなく、前向きな目標を達成していくところに取り組もうと考えました。

2022年度の取り組み~目標達成~

目標の設定と書き換え

管理者の自発目標として、当初は「ACPの充実を図る」とMCチャートに記載していました。しかし、これは目標が大きすぎて漠然としていたので、さらに細かく修正していきました。結果的に、2022年度には、「患者さんの思いを主体とした看護を提供できるようにしたい」と考え、「日々の看護実践の中で、患者さんの『思い』を探ることができる」という表現に書き換えて取り組んでいきました。

(図1)再検討した目標

ロードマップ策定

ロードマップも、当初はわりと粗いものを立てていました。

(図2)当初のロードマップ

例えば上から三つ目の「現在は疾患や病態を中心に考えがちである」というステップについて説明すると、カンファレンスなどが疾患や病態に着目して営まれているという現状を変えるために、「病気や入院は患者さんのライフイベントの中の一つであり、患者さんがどうありたいかという『思い』をベースに考える必要がある、ということを伝える」という方策を考えています。

アクションプランの策定

ロードマップにもとづき、以下のようなアクションプランを作成しました。

(図3)ToDo一覧(抜粋)


アクションプランについては、このように大量に書いていますが、策定した当初は上から1~2行程度しか記載していませんでした。
例えば、一番上にある「3役会で必要性の説明と協力を得る」というところは、最初はその1行しか書いていませんでした。しかし、「これをするためにどのようなことを実行したのか細かく書いてください。それによって経過が分かりやすくなります。」という助言をいただきまして、それ以降の記述を追加しています。

3役会で取り組みの必要性を説明して協力を得る

まずは一番上のToDoについて、詳細を簡単に説明します。

(図4)一つ目のToDo:3役会で取り組みの必要性を説明して協力を得る

「3役会で取り組みの必要性を説明して協力を得る」というToDoにしたのは、ここが揺らぐと実現に向けた取り組みの継続が困難だと考えたからです。そこで、3役会の場はもちろん、日常の管理場面にも関連させて、時間をかけて繰り返し粘り強く伝えていきました。
具体的には、3役会で、管理研修でのそれぞれの気づきや、師長が現状をどのように捉えているかについて、パワーポイントを用いて伝えたりしました。また、師長の思いとして、「忙しさのコントロールは限界があるため、一人ひとりが忙しい中でも自分で考えて、それを実現することによって、看護することの喜びを感じてほしい」と伝えていきました。師長の思いに対する理解を促すために、係長や主任自身の過去の体験を想起させたりしました。
次に、2月1週目には、看護のやりがいを感じてもらうための戦略を示しました。これについては、文献を用いたりして伝えていきました。また、部署がへこたれている状態で改革しようとすると、さらなる疲弊を招くだろうと思ったので、新しいことを始めるのではなく、現在行っている実践の中で、重要かつ自部署の強みである退院支援に着目して取り組んでいくことにしました。そして、係長と主任に「これぐらいならやれそうだ」と思ってもらえるように、「これまでやっていたことの切り口を変えるだけだよ」と何回も伝えました。
次に、私を含めて4人で「もしばなゲーム」を実践しました。お互いの価値観や思い、その理由を語り合い、一人ひとりの思いの違いや、それを話し合うことによる関係の深まりを実感することができました。「もしばなゲーム」の重要性を自分たちで実感して、それをスタッフに広げていくように行動していきました。

「もしばなゲーム」

次に、二つ目のToDoについて説明します。

(図5)二つ目のToDo:「もしばなゲーム」

ここでは、スタッフ全員に「もしばなゲーム」を通じて同様の経験をしてもらい、患者さんの思いに関心を寄せる必要性に気付いてもらえるように計画しています。
一緒に「もしばなゲーム」をし、目標が一致していると確認し合った管理者4人が1名ずつグループに入り、1時間程度で実施しました。時間の内訳は、ゲームに30分程度、終末期の患者さんの関わりについての体験を語り合う時間を30分程度となっています。
当初はワールドカフェを計画していたのですが、コロナ禍で大勢が集まることが難しかったので、1カ月半くらいの時間をかけて、毎日グループで話し合う形で実践していきました。
スタッフの反応については、ToDoの下部に書いた通りです。取り組みへの動機付け、いわゆる「やる気スイッチを押す」ようなことはできたようだと評価しました。

新人看護師への説明

三つ目のToDoについては、新年度になって新人がまた配属されたため、新人にも目標について説明・共有しました。

(図6)三つ目のToDo:新人看護師への説明

「患者の思い」ベースのカンファレンスを開催

ToDoの四つ目からは、実際に患者の思いをベースに仕事ができるように実践していくところに入っていきました。日々の関わりの中で、患者の思いを確認してくるという行動を促す仕掛けとして、病態ベースではなくて、患者さんの思いをベースにしたカンファレンスを開催するようにしました。

「『思い』ファースト」を思い出すための仕掛けと形成的評価

(図7)ToDo四つ目:「患者の思い」ベースのカンファレンスを開催

しかし、カンファレンスの開催も、最初からすぐにうまくいったわけではないので、モニタリングとこまめな形成的評価を行い、様々な試行錯誤をしていきました。その内容が五つ目以降のToDoです。
私たちが実際に行ったことは、視覚に訴えるだとか、「『思い』ファーストだ」と思い出す機会を増やすなど、本当に単純なものばかりでした。

(図8)五つ目以降のToDo

例えば、最初のコアメンバーが見本を見せたり、退院支援看護師に協力を得たりしました。また、カンファレンス記録やパソコンの蓋のところなどに、みんなが常に意識できるように「『思い』ファーストですよ」と書いたりもしました。

(画像1)「『思い』ファースト」と書かれたパソコン

スタッフがうまくプレゼンできそうにないなと思ったら、プレゼンのひな形を作って、やり方を具体的に示すといったことも実施しました。

(画像2)プレゼンのひな形の掲示

さらに、毎日朝ミーティングの時にリーダーさんから「これをやってくるのですよ」と伝えてもらうために、このようなカードも作ったりしました。

(画像3)「リーダーが毎日伝えること」カード

まとめ

これまでに紹介してきたような取り組みの結果、2022年度末のMCサーベイでは、「スタッフが前向きになった」という結果が得られました。現在も、こうした取り組みを継続するために日々努力しているところです。

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