【報告】MCシンポジウム管理実践報告 ③部署の課題をチームで共有する(MCチャート)-3

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院
「新プロジェクトでMCチャートを使ってやってみたら案外うまくいった」

発表者:太田有美看護副部長、一色三千代看護師長

名古屋第二病院では2022年度から「抑制見直しプロジェクト」を開始し、副部長と師長・係長で進めていきました。月1回のプロジェクト会議ではMCチャートを使用して進捗確認や計画の修正などを行ったところ、会議の無駄がなくなり、PDCAも着実に回ってプロジェクトがスムーズに進むようになりました。院内の抑制に対する考え方も少しずつ変わってきています。

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新しい目標~抑制見直しプロジェクト~

発言者:太田有美看護副部長

当院では2022年度から、抑制を見直すプロジェクトを新しく立ち上げました。
当院は2018年度までDiNQLに参加していました。その時のデータでは、他院と比べて当院は抑制率がかなり高いということがわかりました。高度急性期病院ということもあって、治療優先という雰囲気がずっと続いており、「なくしたい」という声もなかなか上げられない状況でした。

抑制見直しプロジェクトは2022年4月から、副部長である私と、師長2名・係長2名というプロジェクトメンバー5名で開始しました。看護部としては、「師長たちが『抑制をゼロにしていきたい』と思い、それによって現場が動き出すところを見たい」という思いがありました。そこで、プロジェクトの始動時にその思いを投げかけ、師長さんが「抑制をなくしたい」と思えるような仕掛け作りをお願いするところから始めました。

(図1)抑制見直しプロジェクト

 

プロジェクトのメンバーとやりとりする中で、抑制をゼロにするというのは非常にハードルが高いという話になりました。そこで「『抑制せざるを得ない3原則』が守られている抑制は許容する」というように目標のハードルを下げました。そして、「3原則に基づいた方法が各単位で実施される」という目標を、左上の外発的な目標として立てました。

会議の場でMCチャートの作成やアクションプランの管理を行った

この抑制プロジェクトを進めるためのロードマップを作っていく際には、私は副部長として、メンバーに「MCチャートの表現を、できるだけ実現可能で具体的なものにしましょう」と伝え、具体化の作業に丁寧に関わっていきました。

(図2)プロジェクトの課題の具体化

 

抑制見直しプロジェクトは、月に1回会議があります。会議室でテレビの画面にMCチャートを映しながら、アクションプランが進んでいるか一つひとつ確認していきました。MCチャートを使って会議を進めていったというのが、今回のプロジェクトの初の試みです。

MCチャートを使ったプロジェクト会議の進め方

 

●実施したことを確認
●実施したことについてその内容をチェック
●必要であればサマリを書く
●次の計画や実施すべきことを確認
●必要であれば計画を修正

当院では、目標管理にマネジメント・コンパスを取り入れてから3年経つのですが、委員会やプロジェクトでも、MCチャートを使った目標管理に本気で取り組んでみたら、思った以上に進捗確認や計画の修正などがしっかりと行われました。計画とアクションプランが明確で、やるべきこともしっかり実施できていたため、会議もスムーズに進みました。計画が進むにつれて、計画を見直しながらMCチャートの内容を少しずつ変えていく、というプロセスも見えるようになりました。
当初は副部長としてかなり深く関わっていたのですが、年度の半ば頃からは、私がいなくても、師長や係長にお任せしていれば、プロジェクトがちゃんとスムーズに進む状態になっていました。

プロジェクトのMCチャートとアクションプラン

ここから具体的にMCチャートを見ていただきます。
今年から始めたプロジェクトのMCチャートなので、まずは目標だけを挙げています。

(図3)プロジェクトのMCチャート



アクションプランについても、かいつまんでお伝えしていきます。
2022年4~5月が期限のものはなく、6月は以下のようなToDoが出ていました。

(図4)2022年6月までのToDo

一つずつ、「次はこれをやりましょう」と会議でアナウンスしたり、師長たちにメールを送ったりしました。
ここに書かれていることについて説明すると、例えば前年度のうちに、抑制に関する講義ビデオや、関連する様々な資料をイントラに上げるといった準備や仕掛け作りはしていたので、今年度はその講義ビデオを全員に確実に見てもらうための活動などを一つずつ書いていきました。

翌月以降も同じように、プロジェクトとして実施すべき内容を書いていきました。
9月くらいになると、私はもうほとんど参加せずに、プロジェクトメンバーにお任せしていたのですが、何を・どうする、という具体的ですぐ動けるような行動計画が書かれるようになっています。

(図5)2022年9月までのToDo

1月には、ゴールが達成できたかについてこれまでの活動を振り返りました。「3原則に沿った抑制ができる」ということをゴールにしていたものの、結果的には、まだ3原則がちゃんと浸透していないという新たな課題が見えました。これについては、来年度に目標を立て直すか、あるいは「問題」として捉えてPDPを展開していくのか、検討が必要だと思っています。

(図6)2022年1月時点での活動の振り返り

まとめ

プロジェクトメンバーとして活動した師長の感想

太田副部長:ここまで、看護部からプロジェクトへの課題の投げかけと、プロジェクトの実際の活動について紹介してきました。
私は副部長として課題を投げかける部分は行いましたが、実際の活動についてはあまり関与しませんでした。そこで、プロジェクトの活動をしてみてどう感じたかについては、プロジェクトメンバーの一色師長に感想を聞いてみようと思います。
まずは、MCチャートを使ってプロジェクトの管理をしたことについて、どうでしたか?

一色師長:計画が具体的になって、毎月実施すべきことが明確になり、それをみんなで共有できていたので、1年を通して活動しやすかったです。
みんなが同じ目的を持っているので、毎月の計画も確実に実行できましたし、計画を見直して必要に応じて修正するということもできたので、目標に向かって確実に進むことができたと思います。
アクションプランについては「完了」とチェックをつけることができるので、経過もよくわかります。また、自分たちのやってきたことが可視化されていることで、しっかり活動を進めることができたという満足感を得られたことも大きかったように思います。

太田副部長:毎月の会議でも、「やったこと」「これからやること」に焦点を当てて話し合っていたので、無駄な時間がなくなり、会議の時間も短くなりました。
このプロジェクトで、MCチャートを使ってやるべきことをしっかりやってチェックするということを繰り返した結果、院内の看護現場も、抑制に対する考え方などが変化してきているように感じます。

質疑応答

Q. 会議の前に何か準備をしていますか?
A. それについては、あまり入念な準備や予習などをしていたわけではありません。ただ、会議の前日までに、メンバー各自が自分のすべきアクションについて確認はしているようです。「あ、明日会議があるから、ちょっと見ておこう」とMCチャートを開く、という感じだと思います。

Q. チャートやプランを具体化していく作業に時間はかかりましたか?
A. プロジェクトが実際に動き出したのは5月だったと思いますが、5~6月の2か月間程度は、きちんとMCチャートを作り上げるというところに注力しました。ただ、2か月といっても、私とプロジェクトメンバーの間で、1回1時間の会議を2回程度行ったという程度です。
今回プロジェクトを進めてみて、「最初に頑張ると後が楽になる」ということにも気づかされました。MCチャートの長所は、最初にしっかりと練り上げるという部分にあるのではないかと思いました。

 

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