PDPについて

問題解決は「困りごと」からはじめよう

PDP(Problem-Disccovery Process)は問題解決のためのツールです。看護管理者の皆さんは、「問題解決」という言葉をよく耳にすると思います。「問題解決のやり方なんて、何度も習って知っているよ」と思う方もいるかもしれません。しかし、そこで言う「問題」とはいったい何なのでしょうか?
ある程度の経験のある看護師であれば、誰しも上司や医師に「結局は何が問題なの?」「僕は 何をしたらいいの?」などと聞かれたことがあると思います。そして、何が問題でどんな解決策を取れば良いかがわからな いから状況を報告して相談しているのに、「何が問題なの?」 「何をしたらいいの?」と聞かれても困る…と思った経験もあるのではないでしょうか。
 実は、人が「問題解決に取り組まなければ」と思うときは、解決すべき問題の正体すら見えていないことが多いのです。むしろ「どうして良いかわからなくて困っている」と言ったほうが適切なのではないでしょうか。そこでPDPでは「『困りごと』から始めよう」を合言葉にしました。PDPでは、「どう解決したら良いか分からない悩み」を「困りごと」と呼び、「有効な解決策があるもの」を「問題」と呼んで区別します。
PDPのフレームワークでは、複数名が2枚のワークシートを使いながら、「最初の困りごと」から「真の困りごと」、続いて「Problem」を発見し、実行計画を立案するまでのプロセスを支援します。以下に、その考え方とやり方を簡単に紹介していきます。

① 困りごと整理シート

図1

問題解決を「困りごと」から始めることは大切ですが、最初に言語化された「困りごと」は、実はその人が一番に困っていることではないことが多々あります。例えば、ある患者さんが、退院後に自宅療養を渋っているとしましょう。その人は「家が古く車椅子で生活するのは難しい。どこか施設に入りたい」と言うのですが、よくよく話を聞いていくと、その人は本当は「同居している長男の家族に負担を掛けるのが心苦しい」と思っていたことがわかりました。こうしたケースでは、「真の困りごと」は「自宅療養では家族に負担をかけてしまう」であり、そこの解決なくしてバリアフリー化の工事をしたとしても、その患者さんは自宅療養に前向きになれないでしょう。
この「真の困りごと」を見つけるために、上記の困りごと整理シート(図1)では、最初に挙げた困りごとより前に起こること(原因や背景)、後に起こること(影響や結果)を左右に書き出す形になっています。主に時系列で論理的に書き出すことによって、「一番の困りごとは何か」を気づくきっかけを作るのです。

② 困りごとの分析

図2

行動計画立案シート(図2)では、困りごと整理シートで設定した「真の困りごと」を具体化・細分化して分析していきます。多くの人が、「真の困りごと」が見つかると、すぐにその原因を考えたくなるのですが、まだ複雑な「困りごと」の段階ですから、簡単には解決できないはずです。そこでまず、「真の困りごと」を具体的に細かい要素に分けて、一つひとつについて原因を考え、ほぐしていきましょう。
図に示した例では「スタッフの超過勤務がなかなか減らない」という最初の困りごとから、「時間内に仕事を終わらせる意識が足りない」という真の困りごと[1]が発見されています。これをさらに細分化し、この人が足りないと感じている「時間内に仕事を終らせる意識」とはどのようなものかを具体的に挙げてもらい、[2-1]に書き込みます。[2-1]の欄の一番上のように、「業務の合間に記録できることをメモしていない」と言語化されたら、それを行わない理由も具体的に考えることができます。ここでは「記録は夕方にまとめて入力するものだと思っているから」という原因が[2-2]に書き込まれました。

③ 解決策を考え、吟味する

困りごとを細分化し、具体的な原因がいくつか洗い出せたら、次に、大まかな解決策をどんどん考え付箋に書き出していきます[2-3]。図2では、4つの原因に対してそれぞれ解決策が挙げられていますが、挙がった解決策の中には、実行する権限や能力がない、実行してもあまり効果が見込めないものも混ざっていることが多いです。そこで、適切な解決策かどうかを判断するために、PDPでは「す・じ・こ」というキーワードを提案しています。

「す」…すぐに着手できる
「じ」…実現可能である
「こ」…効果的である

忙しい看護管理者は「すぐに、自分でできる、効果的なこと」以外のことを実行する余裕はないと考えたほうがいいでしょう。どんなに素晴らしい計画も、「いつかやりたい」「誰かがやってくれればいいな」と思っているばかりで実行されなければ意味がありません。ほんの些細な改善であっても、実行されて効果が生じることが重要なのです。
解決策が「す・じ・こ」で吟味できたら、最も「す・じ・こ」な解決策がある原因をProblem(問題)として設定し、[2-5]に書き込みます。

④ 具体的な行動計画に落とし込む

Problemを設定したら、行動計画を言語化する段階に進みます。計画が実行に移されるかどうかは、いかに「行動するときに考えずに済むか」にかかっています。たとえ「さあやろう!」と思ったとしても、その時に色々と考えること(決めなければならないこと、調整しなければならないこと)が残っていたら、人はなかなか実行に移せないものです。行動計画を具体的に記述し、行動のハードルを下げることが、問題解決において非常に重要なのです。
この行動計画を具体的に記述するコツが「3W1H」です。これは5W1HのうちWhyとWhereを省いたものです。誰が、いつ/いつまでに、何を、どのように。この4要素がしっかり書かれていれば、実行に移すのは簡単です。 さて、行動計画が策定できたら、PDPはこれで終わりです。計画を着実に実行して、PDCAを回していきましょう!