MCチャートを使った副部長による師長の支援の実例

MCチャートは看護部(当院においては看護部管理室)が師長と対話を重ね、部署の管理方針(目標+問題)を互いに納得できる形に落とし込むためのツールであり、MCの組織的導入の根幹をなすものです。そこでこの発表では、MCチャートを通じて、管理室と師長が、部署の目標をどのように共有していったのかを、循環器内科の病棟の事例をもとに紹介します。

循環器内科の師長と副部長のやり取り

看護部管理室は当初、MCチャート上で「心疾患に対する専門性の高い看護師を育成する」という目標を示していました。
この目標には、「当院は特定機能病院として、重症心不全の集学的治療が今後求められるようになる。そこで、経験年数の浅いスタッフが多くても重症心不全の治療に対応できるような病棟になってほしい」という意図が込められていました。
さて、副部長と師長が部署目標について話し合うための面談の機会がやってきました。

副部長
こんにちは。この部署のMCチャートに、看護部からこの部署に期待する目標について示しておいたのですが、見ましたか?
師長
(目標を確認はしたけれど、何を求められているんだろう?具体策がわからないなあ…)
師長
はい、見ました。あの目標って、慢性心不全認定看護師の研修に誰かを参加させればいいってことですか?それとも、心疾患に関した勉強会とかを計画したらいいんですか?
副部長
(ああ、あれだけでは私たちの意図が全然伝わっていなかった…!しっかり私たちの思いを伝えて、話し合わなければ。)
副部長
研修や勉強会といった特定の手段にとらわれるのではなくて、病棟全体で、重症心不全患者の看護の質を高めていく方法を、話し合いながら考えてみてほしいんです。
副部長
この部署だったら、みんなで一緒に考えて取り組んでいけるはずだから、まずは管理室としての思いを伝えますね。師長さんの考えも私に聴かせてください。
副部長
看護部として、目指してほしいと思っていることは…(この目標に込められた意図を伝える)
師長
なるほど、そういうことだったんですね!MCチャートに書かれた言葉だけ見ると、認定看護師を育成することを求められているんだと思ってしまって、そういう意図があったとはわかりませんでした。
副部長
私の書き方では、意図を十分伝えることができていなかったみたいですね。
副部長
さあ、次は師長さんの考えていることを聴かせてください。
それに合わせて、この目標を、部署のスタッフにわかりやすく、より取り組みやすくなる表現に変えていきましょう。部署のみんなが、「よし、取り組もう」という前向きな気持ちになることが大切だと私は思っているから。
師長
(あれ、私の考えていることや思いを言ってもいいんだ!それに、示された目標は、私たちにわかりやすいように書き換えてしまってもいいんだ…!なんだか、今までの面談とはちょっと違う気がする。よし、副部長に、私たちがやりたいことを伝えてみよう。)
師長
じゃあ、うまく話せないかもしれませんが、聴いてください。 私たちの部署では、できることや役割が異なっていても、スタッフ誰もが考えて、力を合わせてやっていけるようになりたくて~(とりとめのない内容が続く)
副部長
(師長が心を開いて、話をしてくれる気になったようだ。嬉しいな。でも、ちょっと抽象的すぎて、わかるようでわからない…。そうだ、もっと事実に基づいて、具体的に話してもらおう!)
副部長
MCチャートの右側の「自発的な目標」のところにも、今話してくれたようなことが書いてありましたね。それを、「心不全患者の看護」という話に沿って表現すると、どうなりますか?「誰がどんなふうになってほしい」とか、そういうふうに具体的に話してもらえたら、私ももっと師長さんの思いがわかるようになると思う。
師長
(最近、副部長からよく「誰が言っているの?」とか「それは事実なの?思い込みの可能性はない?」と質問されるようになったな。今回も、「誰が」ともっと具体的に話した方がいいみたい。)
師長
ええと…。具体的に言うと、例えばベテランスタッフは、経験の浅い看護師に対して、知識や技術を高めることばかり求めてしまう。でも新人看護師は、患者さんの日常生活に関するいろいろな情報を持っているんです。その情報をどうケアに活かせばいいかよくわかっていないだけで。
師長
だから、ベテランと新人が一緒に、そのせっかくの情報をケアプランに結びつけて考えることができる…そんな病棟になればいいなと思っています。
副部長
なるほど!すごくよくわかった。経験年数に関わらず、お互いにできることを尊重しあいながら、共にケアをする…という感じだね。
師長
そうなんですよ!
副部長
できる看護師だけが頑張る、というのではなくて、様々な経験を通じてみんなで学びあえるようなチームになったらいいね。じゃあ、MCチャートの右側にはそんなふうに書いてみましょうか。

ここから40~60分ほどかけて、目標をより良い表現にブラッシュアップするための話し合いを行いました。
管理室が最初に示していた目標「心疾患に対する専門性の高い看護師の育成をする」は、
副部長と師長の合意のもと、「心不全患者が増えてきたときに対応できるチーム(病棟)になる」という目標に書き換えられました。

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