看護部(看護部管理室+部署)のマネジメントの変化

MCチャートを使い、循環器内科病棟で行ったようなやり取りを繰り返していった結果、当院の看護部(看護部管理室と各部署)では次のような変化が起こりました。

過去のマネジメント 現在のマネジメント
看護師長 問題発生時、すぐに副部長に解決策を求める 問題が発生したら、まずは自分たちで考える
看護部管理室 解決策と思われるものを師長に指示する 問題の解決策(手段)ではなく、問題を解きほぐして原因を考えるための支援をする

職務満足度調査の結果では、「自己効力感」など、仕事に対する前向きな気持ちを表す項目について、年々改善傾向がみられるようになってきました。
管理室も師長たちも「今までと何かが違う」という手応えを感じるようになっています。

師長と管理室が共に変化したこと

「持続的な看護組織を考える研究会」が開発・提唱している「看護管理者の継続学習指針」では、問題解決を支える態度・スキルとして「リフレクティブな姿勢」「論理的思考」「対話的な姿勢」の三つを挙げています。
MCチャートを介した話し合いを続けた結果、当院の看護部に起きた変化は、まさにこの三つの姿勢に当てはまるものでした。

リフレクティブな姿勢

これまで以上に副部長と師長がよく意見を交換し合うようになりました。結果として相手の考えをよく聞き、理解できるようになりました。
それにより、「これまで自分が考えていたことは、自分の思い込みではないのか?本当に正しいのか?」とよく振り返るようになり、自分以外の意見や価値観に注目するようになりました。

論理的思考~事実と推測を分け、事実に基づいて考える~

また、「自分の考えは本当に正しいのか?」を振り返るために、「自分の言っていることは事実なのか、それとも推測なのか」をしっかりと分けて考えるようになりました。
それにより、これまでは事実ではなく単なる推測に基づいて計画立案を実施してしまうことが多かった、ということに気づかされました。

論理的思考~物事をより細かい要素に分解し、正しい順序に並べる~

さらに、今目の前に生じている現象について、どのような要因が絡み合っているのかを根気よく分解し、構造や物事がどのような順序で起きているのかを把握するようになりました。
そして、その一つひとつについて原因を分析しつつ、一つの原因や解決策に固執するのではなく、他にも思い当たる原因や解決策がないか見渡すようになりました。

対話的な姿勢

自分が思い描いていることについて、相手も同じようにイメージできているか、ということを重視した話し合いができるようになりました。
これにより、お互いの考えをしっかりと具体的に共有できるようになったと感じます。

師長と管理室の具体的なビフォーアフター

次に、師長と管理室のそれぞれの具体的な変化について、表形式で紹介します。

師長の変化

Before After
とりあえず何かしないといけないから、駄目出しされなさそうな無難なことから取り組む 管理室から期待されていることを踏まえつつ、部署に本当に必要で、取り組みたいと思えることに取り組む
何となく現状分析、とりあえず計画立案。実現可能性のことは考えない 目標を達成するために必要な的確な分析をし、実現可能で現実的な計画を立案
目標管理は師長だけが取り組むものだと思っている。目標が師長の思いつきや思い込みに偏っている 目標は部署全体で取り組むものだと考えている。副師長やスタッフと話し合い、師長の思い込みに偏らない目標を立てる
目標はすべて1年計画・1年完結。次の目標は次の年度へ。中だるみが生じることも 一つの目標が達成できたら、年度途中でもその時点で次の目標に取り掛かる
看護部管理室との中間面談・年度末面談の時期が近づくと、辻褄合わせで計画を実施し、評価する 面談の時期によらず、計画の実施に合わせて評価を行う
年度末に「目標を達成した」と評価を受けても、達成感や「やってよかった」という手応えがない 一つの目標を達成できたら確実に良い変化が見られる。「やってよかった」と手応えを感じられる

看護部管理室の変化

Before After
看護部の方針を発表した後は部署におまかせ。各部署に「何を期待しているか」を伝えることはなく、各部署のマネジメントの当事者・責任者は師長だと考えている 看護部の方針に沿って、管理室が部署に「何を期待しているか」を伝え、意見を交換する。管理室も部署のマネジメントに当事者意識を持つ
年度初め、年度中間、年度末の時期が来たら師長と面談する 時期を問わず、必要だと感じたときに、師長や副師長と積極的に意見交換する
「師長がそう言うなら間違いはないだろう」と考え、目標を設定した意図や部署の現状を詳しく問いかけることはしない 現状分析や目標について、師長はどのような経緯でそう考えるようになったか、思い込みは含まれていないかと問いかける
部署の目標は師長自身が取り組み達成するものだと考え、師長にばかり注目する 部署の目標は、師長がスタッフと協力しながら部署全体で取り組むものだと考え、部署全体の動きに注目する
師長の描く「ビジョン」や「夢」(目標を達成することで自分の部署をどのような姿にしたいのか)に注目することはない 師長の描く「ビジョン」や「夢」に注目し、それを共有できる

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